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年の瀬で会社も年末年始の休みに入った。10月に結婚して休暇をとっていたこともあり、その分仕事が溜まって年末にかけては本当に多忙だった。仕事以外でも忘年会がいくつかあり帰りが遅い時もあった。
そして昨日は昔からのバンド仲間に誘われ、毎年恒例のオールナイトでのスタジオでの練習があった。学生時代からの仲間だが、社会人になってもいまだに毎年集まってはスタジオに足を運び遊んでいた。私は妻の身体を思うと気が引けたが、昔からの友達の誘いはことわれず、夜から出かけた。
「新婚なのに・・・・。」
妻は出て行く私にそう声をかける。こんな言葉は以前の妻は絶対に言わなかった。妻は身体の心配を抱えている上に私がおらず不安だったのだろう。ただ、私はその妻の思いを理解できずにいる。
そして大晦日。二人で初めての年越しということもあり、私はそのシチュエーションに少し期待していた。不思議な感情だと思う。今までは年末年始というのは友達と酒を飲んで、騒いで、というのが常だった。生まれて初めての「妻」との一緒の年越し。何とも言えない嬉しい感情が私の中にある。
結婚してから分かる事、そういうことは沢山あると感じる。愛する女性といつも一緒にいるときの感情、付き合っている時には分からなかった妻の思いや仕草。一緒の思いだからこそあるすれ違い。こんな感情は独身時代には思いもしなかったし、そんなことは想像もできなかった。
しかし、この日妻は今まで以上に体調が悪かった。手の痺れが今まで以上に出てきたのである。私もさすがに不安になった。風邪のウイルスのせいなのか。それとも他の病気なのか。それとも精神的なものなのか。妻は結婚して間もない二人の生活に対して明らかに不安感を持っている。私は精一杯頑張っているし、妻の気持ちも充分理解しているつもりだ。でも今の妻には通じない。私もこの二人の隙間を埋めれずにいる。
「やっぱり病院に行こう」
私が切り出した。大晦日に病院がやっているか。でも急患でも何でも今の妻の身体を見て欲しい。そう思った。青白い顔をした妻に服を着せ、車を出す為に私は小走りに駐車場へ向かう。妻を車に乗せ妻が以前通っていたS病院へ向かった。
S病院につく。大晦日の日だ。当然通常診療はやっていない。急患である。警備員室で急患の手続きをする。大晦日で通常の診療はやっていないのにこの病院は一杯だ。廊下が待合室になっていて、そこには10組程の患者がいる。青い顔をした妻が隣に座る。苦しそうだ。妻は私の肩に頭をもたれかけてきた。息が少しばかり荒い。待合室にいる時間がすごく長く感じる。
「次の方どうぞ」
ようやく妻の名前が呼ばれた。不安なまま私と妻は診察室に入った。
診察室に入ると、まだ若い先生がそこにいた。失礼だが名医には見えない。若い先生が当直で修行なのだろう。この先生で大丈夫なのか。私はそう思った。彼は内科の先生だと言う。 妻が症状を説明する。動揺しているらしく、あまりうまく説明ができない。私は思わず口を出して説明してしまう。
「今月の初めから風邪気味で、微熱があったんですが、それがずっと続いています。2週間ほど前から左肩に違和感があって、シャワーを浴びると感じないって言ってました。2〜3日前から手が痺れるらしいです。」
私がそう説明すると、先生は分かったのか分からないのか、喉、目を見て、妻に聴診器を当てる。
「今日は大晦日なので詳しい診療が出来ません。年を越してから平日診療の時にまたいらして下さい。ただ、もしかしたら内科的なものではなく、整形外科にかかった方が・・・・。」
やはりここでもまだ分からないのか。妻と私は不安を抱えたまま年を越すことになった。
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